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十一 ヨゼフは兄たちに売られた



 ある日、ヨゼフの兄たちは、父の羊をつれて、遠く離れた牧場へ行っていました。ヤコブはそのようすを知りたいと思い、ヨゼフを呼んで、「おまえはこれから兄さんたちの所へ行って、みんな無事かどうか、家畜はどうしているか、見てきなさい」といいつけました。ヨゼフは喜んで、早速出かけました。

 牧場にいた兄たちは、遠くのほうから、ヨゼフのこちらへくる姿を見て、「おや夢見の先生が来るぞ。どうだ、ひとつみんなであいつを殺してしまおうじゃないか。そうすればあいつも、自分の見た夢が本当かどうか、自分でわかるさ」と話し合いました。しかし、一番上の兄のルベンだけは、「血を流すことはよくない。それよりも、いっそ、この空井戸に投げ込んでやろうじゃないか」と言いました。

 そうとは知らないヨゼフは、兄たちのいる所へやってきました。すると、みなはいきなり立ち上がって、ヨゼフのきれいな着物をはぎとり、空井戸の中へ投げ込んでしまいました。



 そうしてから、そばの草の上で食事をしていると、そこへ、これからエジプトへ行く隊商がやってきました。これを見た兄の一人ユダは、急に思いついて言いました。「どうだい。おれたちが弟を殺したところで何にもならないじゃないか。それよりも、あの商人たちに売りとばしたらどうだろう。」これを聞いた兄弟はみな、「そうだそうだ。それはいい考えだ」と大賛成でした。そこで早速、空井戸からヨゼフを引き上げて、銀貨20枚で商人に売ってしまいました。ヨゼフは泣きながら一生懸命にたのみましたが、兄たちは少しもかまいません。とうとうヨゼフは商人につれられて行ってしまいました。

 そのあと、兄たちは相談して雄山羊を一頭殺し、その血をヨゼフからぬがせた着物に塗りつけ、父のヤコブの所へ持たせてやって、「私たちはこの着物を見つけましたが、ひょっとしたら、これはヨゼフのではありませんでしたか?」と聞かせました。

 ヤコブはこれを一目見て、「ああ!これはヨゼフのだ。ヨゼフは野獣に食われたに違いない。ヨゼフは死んでしまった!」と叫びました。それからというもの、ヤコブは、自分の一番可愛がっていた子供を失った悲しみのため、昼も夜も泣き続けました。


一 人をねたんだ結果はどうなるか、このお話からよく考えなさい。ほかの人がよい着物を着ていたり、よい物をもらったり、ほめられたり、または可愛がられたりしても、決してねたんではなりません。


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